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2012年11月27日

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。
当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。
私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。
このブログを読んでいただいている読者の方にお伝えすることが出来ればと思います。

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哺乳行動と顎の発達の相関

以前、日本にしばらく滞在していたドイツの大学の歯学部教授から、「日本の若い人には、犬歯が唇側転移している例を多く見かけるが、何故なのか」という質問があり、かなり日本人の歯並びの悪さが気になっている様子でした。

欧州では、八重歯はお揃えいい吸血鬼ドラキュラの牙と同様に見られ、あまり良い印象を受けないために、そのような質問が出たのではないかと思います。

ドイツでは乳幼児の顎の正しい発達のために、Dr.MüllerによりNUKのニップルが開発されました。

これは乳児の発達程度に合わせ、ニップルの大きさやミルクの出る穴の大きさを変えて使用できます。この乳首の持つ機能は、母親の乳頭に最も近似していて、乳児が正しい舌の使い方をするとミルクが出てくるように設計されています。

正常な哺乳行動では、乳児は母親の乳頭を口にくわえ込み、乳首を舌先で強く口蓋に押し付け、数か所の乳管開口部から分泌される乳汁を飲み込みます。そのとき、唇に力を入れて吸引しながら下顎はわずかな前後運動をすると同時に、舌は口蓋へ押し付けられます。

その結果、乳児は舌の正しい動きを学習し、口唇には力が付き、口蓋は広大し、歯の生えてくる十分なスペースを確保することができます。

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人工授乳においても、このような哺乳行動が行わなければ、正しい顎の発達は望めません。NUKは、この点を考慮して開発されたものです。

つまりNUKのニップルでは、ミルクの出てくる穴が口蓋側にあり、舌で押し付けることにより、ミルクは口蓋鄒壁に沿って排出され、舌いっぱいに広がった後、飲み込むように設計されています。

同時に咀嚼筋の発達を促し、顎口腔系は正常に発達してきます。

適正でないニップルの弊害

通常市販されているニップルは、乳首が長過ぎ、そのうえ大きな穴が先端にあり、しかも空気の取り入れ口まであるために、哺乳瓶を傾けただけで自然にミルクが流れ出してきます

こうしたニップルを用いた場合には、乳児の意思に関係なくミルクが出てくるために、乳児は何の努力をしなくても、ただ飲み込むだけでよいということになり ます。この場合。乳児は舌を細長く丸めニップルを包み込み、自分の意思とは関係なしに出てくるミルクをストップさせるために前方に押し付け、ピストン運動 をするように前後に動かします。

その結果、人生の出発点である乳児期に間違った舌の運動を学習してしまい、嚥下の際、舌を口蓋鄒壁に押し付けることができず、突出する癖を脳に刷り込んでしまいます。

このような癖を持った人が成長すると、不正な歯並び、それに伴う発音の異常、さらに顎口腔系機能障害等、様々な症状が現れてくることが予想できます。

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嚥下の際、口蓋鄒壁に舌を押し付けた場合には、舌は下顎側にあるため、下顎は後退し、中心位とほぼ一致すると言われる嚥下位をとり、バランスが保たれています。

逆に舌の突出癖がある場合には、下顎は嚥下の回数に応じて前後に動きます。通常、嚥下は一日に600回から2000回といわれるので、この癖を持つ人で は、正常者に比較して、k学の前後運動に関与する筋の疲労が増すことが当然考えられます、舌は下顎の水先案内の役目をしており、舌を前に突出させれば、そ れに伴って下顎は自然に前に出て行き、舌を側方にだせば下顎も同じ方向に移動します。

したがって舌の動く方向に下顎も移動することになります。舌を突出させる嚥下は正常な筋肉の使い方ができず、頬筋、口輪筋、オトガイ筋の緊張が強く現れてきます。

このようなアンバランスな筋肉の使い方の結果、臼歯は頬筋の緊張の影響で頬側から力を受け、歯列は狭小化し、前歯が広がり臼歯が内側転移したΩオメガ型歯列を形作ってしまうことになります。

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舌圧の研究

嚥下時の口腔周囲の筋肉の圧力に関しては、舌側からの圧力よりも強いと言われていて、「正常咬合者と不正咬合者の上下前歯部における口腔筋圧の研究」という根津の報告によると、正常咬合者の場合、安静時には、上顎唇側圧平均7.2g/cm2、同舌側圧平均10.1g/cm2,下顎では唇側圧8.6g/cm2、舌側圧14.6g/cm2であり、上下とも舌側圧が唇側圧を上回っていました。

さらに唾液嚥下時では、上顎唇側圧は60.0g/cm2、同舌側圧は123.2g/cm2で、舌の圧力が唇の圧力の2倍を示した興味ある結果を得ています。

この報告から、舌の力と唇や頬の力の不均衡が起きることにより、歯列不正が生じるであろうことは容易に納得できます。

歯列不正者は、嚥下の際に上下の歯列の間に舌を突出させています。

「サ行「「タ行」「ラ行」の発音の際にも舌の突出が見られ、明瞭な発音の違いを区別できない結果となります。

このような不正咬合の治療に際しては矯正治療や補綴治療を行うことがしばしばありますが、外観の修正という現象のみを治しても、その症状を現した原因を除去しなければ、発音の異常や顎口腔の機能異常を治癒させることは不可能です。

「生命現象とは、内部環境を恒常に保つための努力である」といわれます。

生きている人間の心身は同様しつつ安定を保っているものであって、もし恒常が破れて安定状態に戻ることができない程になったとき、それは病気となります。そのため、人間の身体全体を考えたとき、どの部分から見てもバランスがとれ、左右・前後に偏らないことが理想です。

これは歯の位置についても同様です。 

 
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嚥下の際の舌は口蓋鄒壁に押し付けた後、舌背部を徐々に押し付けていきます。
◆根津論文(歯学学報より)

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。
当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。
私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。
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発音の悪さが目立つ時代

近頃テレビを見たり、ラジオを聞いていると、発音の悪い人が目立って多くなってきた気がします。

それも戦前、戦後の食糧事情があまり良くない時代に育った中高年の人には見られず、景気回復の兆しが現れてきた昭和30年代以後から飽食の時代といわれる現代に生まれた人たちの中に多く見受けられます。

特に、しゃべることを業としているアナウサーやキャスターでも発音の悪さが目立っているのはなぜでしょうか。

アナウサーではありませんが、衛星放送の際、外国放送を同時通訳する人の中にも発音にクセのある人が何人かいて、大変聞き取りにくいことがあります。ある テレビのアナウサーの中には「サシスセソ」と「タチツテト」の発音が区別できず、甘ったるいような、聞き取りにくい発音をしている人がいます。

このような人を気にしてみていると、例外なく歯並びが悪かったり、オープンバイト(前歯が開いている噛み合わせ)である人が多く、特に前歯が叢生(歯並びが悪い)で、犬歯が八重歯になっていて大変気になります。

そんな状況を私たち歯科医師が見ていると、むなしい気がしてなりません。

このような歯並びの状態の人たちは、ただ単に見た目が悪いと言うだけでなく、将来審美性の問題や顎関節症の治療の必要性を抱えた潜在治療困難患者であり、将来必ず歯科治療を希望して来院することが予想されるからです。

哺乳瓶の歴史は100年

人類の進化過程では、自然環境の中で生活し、食糧も動物を捕獲したり、植物を採集し、自然の食物を摂取してきました。

人工的に食物が栽培されたり、家畜が飼われて、それを食糧として生活したのは農耕文化が入ってきた縄文時代以後のことでしょう。

前期弥生の農耕民の遺跡から、親子の牛の遺体が発見されています。土師器文化期になると家畜の飼育が盛んになっていることから、1400年前には牛乳の飲用が行われていたと考えるのが妥当だと考えられます。

そこでは、子どもを育てる場合には母乳による保育が行われていたことは当然ですが、家畜から乳を母親代わりに与えたことも考えられ、与え方も、器から直接飲ませたり、匙のようなもので与えたのではないかと想像されます。

粉ミルクを哺乳瓶で飲ませるのが一般に広まっていたのは戦後になってからのことですが、牛の乳を哺乳瓶を用いて飲ませるようになった歴史は比較的新しく、1897年(明治30年)前後にオランダ製口吹ガラスのものが、ごく一部の人に使われたのが最初と言われます。

それまで竹の筒におかゆ等を入れ、飲んでいました。

進化過程を再現する胎児

宇宙の惑星である地球上に生命が誕生したのは、今から40億年前にさかのぼります。太陽からの紫外線を避けて、海中に原生動物が誕生し、その後デボン紀に硬骨魚類が生まれ、進化をした魚は両性類として陸に上がってきました。その後、爬虫類が生まれ、哺乳類が出現しました。

ドイツのヘッケルは「個体発生は系統発生の繰り返しである」という設を唱えました。それは、卵から発生が進んで成体に達するまでの過程は、その生物が辿ってきた進化の過程を短時間で再現している、というものです。

母親の胎内で一個の卵子と精子が結ばれ、受精卵ができ、生命への第一歩を迎えます。その後、母親の羊水の中で39週間を過ごし、その間12~15週間には、羊水を飲み始めると同時に、生まれてから母親の乳頭に吸い付くための準備運動である指しゃぶりを始めます。

このことは最近の超音波診断器の発達により証明されています。うまれてからは、しばらくたつと手と足を使い上手に腹這いを始め、高這いを経て、体を浮かせ立ち上がります。

これは、あたかも生物の進化過程と同じ経路を辿っています。すなわち、海水中の魚から両生類として陸へ這い上がり、爬虫類を経過して哺乳類となり、直立二足歩行が完成するのと同じということです。

お乳は、吸ってもらって初めて出る

人間の胎児は、哺乳動物としては未熟のまま生まれてきます。つまり、大脳皮質が良く発達しているため、頭が大きく自力で立ちあがることができません。そのためじぶんから母親のお乳を吸いに行くことができず、母親からの授乳により生命が保たれます。

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哺乳という行為は自然の摂理であり、赤ちゃんが乳頭を吸うことにより、下垂体から分泌される催乳ホルモン・プロラクチンによって乳汁が促され、積極的に授乳することで、十分な母乳が出てきます。

小児科医は

「お乳は出るから赤ちゃんに吸わせるのではなく、赤ちゃんい吸ってもらって初めて出るのです」と訴えています。

人間の進化過程で、現在のように人工的に哺乳瓶を用いて母親の代わりに授乳させてきた時代はなく、それは乳児の成長に大きな影響を与えています。

どんな乳頭の形態といえども、人間の乳首に勝るものはありません。

乳児期に良い歯列(歯並び)を作り出す大きながっしりとした顎を母乳により作り上げる必要があります。

母親の胸に抱かれての授乳は、生まれたばかりの赤ちゃんにとって最大の運動であり、額に汗を流しながら夢中になって母親の乳頭に吸い付き、疲れ切ってすやすやと眠りに入ります。

しばらくすると思い出したかのように再び吸い始めます。

この行為は顎口腔系の発達に非常に重要であり、誤った哺乳行動が舌壁を生む要因となります。

その結果、ディスクレパンシー(歯並びが悪くなる)を引き起こし、発音の悪さに大きく関わりあいがでてくるということです。

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国産のニップルは乳頭が長くて穴が大きく、空気孔もあり、努力しなくても乳が出ます。


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NUKの乳頭を舌で口蓋に押し付けることで父が口蓋いっぱいに広がり、歯列を作ります。

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こちらは、NUKのおしゃぶりを吸っている赤ちゃんです。

 


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稲葉歯科医院 院長 稲葉由里子 顧問 稲葉繁

稲葉歯科医院
院長 稲葉由里子

昭和44年に父、稲葉繁(現・顧問)が文京区伝通院で稲葉歯科医院を開業、平成11年に場所を移して秋葉原で新しく開業しました。

「入れ歯が合わず、食べたいものが食べられない」
「口を開けると金属のバネが見えるのがいやだ」
「うまく発音できないので、しゃべるのがおっくう・・・」

このような入れ歯のお悩みをお持ちの方、多いのではないでしょうか。

当院では、入れ歯の本場ドイツで直接学んだ技術を活かし、つけていることを忘れるくらい、自分の歯のように何でも噛めて、笑顔に自信がもてる入れ歯を作っております。

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