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2015年1月28日

こんにちは。
稲葉歯科医院院長、稲葉由里子です。

入れ歯に関する問い合わせそして相談が以前に増して増えています。

当院の患者様は全国からいらっしゃいますが、最近は海外に住んでいらっしゃる日本人の患者様からご相談をいただくようになりました。

やはり、入れ歯に関する情報は日本語で読み、日本人の先生に相談をされたいと思われているようです。

テレスコープシステムは、大変精密で技工作業にどうしても時間がかかります。
高度な技術も必要ですし、簡単には製作できません。

型とりをしてから最低でも4回は通っていただく必要があります。
患者様は一ヶ月に一度、日本に治療にいらしていただいておりますが、完成に期待を寄せ、楽しみにしてくださっています。

世界的にもインプラント治療に偏っている傾向にあるので、インプラントが出来ない方、またやりたくない方は、テレスコープシステムの技術を求めて帰国されるようです。

ドイツでは120年以上の歴史あるテレスコープシステム、入れ歯の技術が今、日本で求められていると実感しています。

そして、全体的に、最近のご相談内容で多い事。

以前は、入れ歯になるのが嫌だから、インプラントをされる方が多くいらっしゃいました。
最近の傾向としては、インプラントをするのが嫌だから、入れ歯をしたいとおっしゃる方が増えているように感じます。

先日、どうしてもインプラントをしたくないとおっしゃる患者様がいらっしゃいました。
沢山の歯科医院に相談したけれども、120%すべての先生がインプラントを薦められるので、治療が先に進まないということでした。

患者様は、説得される度に疲れてしまったといいます。

また、別の例では、70代の女性の患者様のお口の中に歯8本のインプラントが入っていました。
最初は3本のインプラントだけでしたが、継ぎ足し継ぎ足しで8本になったとおっしゃいました。

大変な思いをされて治療されたインプラントは腫れていました。
痛くて噛めないとおっしゃいます。
今回、もう1本化膿した歯があるので、そこもインプラントと言われ、もう嫌になってしまったそうです。

私は思いました。

もっと、全体的に治療計画を立てないといけなかったのでは・・・
ということです。

歯がないところにインプラントを入れる。

という治療計画はあまりに安易だと感じます。
患者様の年齢も考え、将来他の残っている歯がどうなるかも予想し、患者様にもリスクをお伝えしないと、結果患者様から信頼を失ってしまう事にもなりかねません。

また、せっかく入れたインプラントですが、噛み合わせがあっていない、噛んでいないケースも多く見受けられます。

昨年、ドイツチュービンゲン大学、Weber教授をお招きし、ドイツでの最新治療についてお話をいただきました。

多数歯欠損(沢山の歯を失っている場合)インプラント治療の上部構造にテレスコープシステムを併用することが増えていて、万が一インプラントを失ってしまっても対応できるようにされていました。

入れ歯をするにも、インプラントをするにも、診査診断はとても重要だと思います。

失った歯だけを補えば良いわけではなく、全体を予測することが大切です。

ドイツの歯科大学では、失った歯に対して、入れ歯やインプラントの治療計画、設計の授業があります。

教授を交えて議論します。

日本でも大学から、診査診断治療計画、全体を予測する教育がとても大切だと感じました。


2012年11月27日

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。
当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。
私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。
このブログを読んでいただいている読者の方にお伝えすることが出来ればと思います。

☆ 彡:・;.*:・。゜゜・:゜*:。゜.*。゜.o。・。゜。o.゜。・*。・゜.。☆彡

哺乳行動と顎の発達の相関

以前、日本にしばらく滞在していたドイツの大学の歯学部教授から、「日本の若い人には、犬歯が唇側転移している例を多く見かけるが、何故なのか」という質問があり、かなり日本人の歯並びの悪さが気になっている様子でした。

欧州では、八重歯はお揃えいい吸血鬼ドラキュラの牙と同様に見られ、あまり良い印象を受けないために、そのような質問が出たのではないかと思います。

ドイツでは乳幼児の顎の正しい発達のために、Dr.MüllerによりNUKのニップルが開発されました。

これは乳児の発達程度に合わせ、ニップルの大きさやミルクの出る穴の大きさを変えて使用できます。この乳首の持つ機能は、母親の乳頭に最も近似していて、乳児が正しい舌の使い方をするとミルクが出てくるように設計されています。

正常な哺乳行動では、乳児は母親の乳頭を口にくわえ込み、乳首を舌先で強く口蓋に押し付け、数か所の乳管開口部から分泌される乳汁を飲み込みます。そのとき、唇に力を入れて吸引しながら下顎はわずかな前後運動をすると同時に、舌は口蓋へ押し付けられます。

その結果、乳児は舌の正しい動きを学習し、口唇には力が付き、口蓋は広大し、歯の生えてくる十分なスペースを確保することができます。

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人工授乳においても、このような哺乳行動が行わなければ、正しい顎の発達は望めません。NUKは、この点を考慮して開発されたものです。

つまりNUKのニップルでは、ミルクの出てくる穴が口蓋側にあり、舌で押し付けることにより、ミルクは口蓋鄒壁に沿って排出され、舌いっぱいに広がった後、飲み込むように設計されています。

同時に咀嚼筋の発達を促し、顎口腔系は正常に発達してきます。

適正でないニップルの弊害

通常市販されているニップルは、乳首が長過ぎ、そのうえ大きな穴が先端にあり、しかも空気の取り入れ口まであるために、哺乳瓶を傾けただけで自然にミルクが流れ出してきます

こうしたニップルを用いた場合には、乳児の意思に関係なくミルクが出てくるために、乳児は何の努力をしなくても、ただ飲み込むだけでよいということになり ます。この場合。乳児は舌を細長く丸めニップルを包み込み、自分の意思とは関係なしに出てくるミルクをストップさせるために前方に押し付け、ピストン運動 をするように前後に動かします。

その結果、人生の出発点である乳児期に間違った舌の運動を学習してしまい、嚥下の際、舌を口蓋鄒壁に押し付けることができず、突出する癖を脳に刷り込んでしまいます。

このような癖を持った人が成長すると、不正な歯並び、それに伴う発音の異常、さらに顎口腔系機能障害等、様々な症状が現れてくることが予想できます。

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嚥下の際、口蓋鄒壁に舌を押し付けた場合には、舌は下顎側にあるため、下顎は後退し、中心位とほぼ一致すると言われる嚥下位をとり、バランスが保たれています。

逆に舌の突出癖がある場合には、下顎は嚥下の回数に応じて前後に動きます。通常、嚥下は一日に600回から2000回といわれるので、この癖を持つ人で は、正常者に比較して、k学の前後運動に関与する筋の疲労が増すことが当然考えられます、舌は下顎の水先案内の役目をしており、舌を前に突出させれば、そ れに伴って下顎は自然に前に出て行き、舌を側方にだせば下顎も同じ方向に移動します。

したがって舌の動く方向に下顎も移動することになります。舌を突出させる嚥下は正常な筋肉の使い方ができず、頬筋、口輪筋、オトガイ筋の緊張が強く現れてきます。

このようなアンバランスな筋肉の使い方の結果、臼歯は頬筋の緊張の影響で頬側から力を受け、歯列は狭小化し、前歯が広がり臼歯が内側転移したΩオメガ型歯列を形作ってしまうことになります。

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舌圧の研究

嚥下時の口腔周囲の筋肉の圧力に関しては、舌側からの圧力よりも強いと言われていて、「正常咬合者と不正咬合者の上下前歯部における口腔筋圧の研究」という根津の報告によると、正常咬合者の場合、安静時には、上顎唇側圧平均7.2g/cm2、同舌側圧平均10.1g/cm2,下顎では唇側圧8.6g/cm2、舌側圧14.6g/cm2であり、上下とも舌側圧が唇側圧を上回っていました。

さらに唾液嚥下時では、上顎唇側圧は60.0g/cm2、同舌側圧は123.2g/cm2で、舌の圧力が唇の圧力の2倍を示した興味ある結果を得ています。

この報告から、舌の力と唇や頬の力の不均衡が起きることにより、歯列不正が生じるであろうことは容易に納得できます。

歯列不正者は、嚥下の際に上下の歯列の間に舌を突出させています。

「サ行「「タ行」「ラ行」の発音の際にも舌の突出が見られ、明瞭な発音の違いを区別できない結果となります。

このような不正咬合の治療に際しては矯正治療や補綴治療を行うことがしばしばありますが、外観の修正という現象のみを治しても、その症状を現した原因を除去しなければ、発音の異常や顎口腔の機能異常を治癒させることは不可能です。

「生命現象とは、内部環境を恒常に保つための努力である」といわれます。

生きている人間の心身は同様しつつ安定を保っているものであって、もし恒常が破れて安定状態に戻ることができない程になったとき、それは病気となります。そのため、人間の身体全体を考えたとき、どの部分から見てもバランスがとれ、左右・前後に偏らないことが理想です。

これは歯の位置についても同様です。 

 
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嚥下の際の舌は口蓋鄒壁に押し付けた後、舌背部を徐々に押し付けていきます。
◆根津論文(歯学学報より)

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。
当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。
私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。
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発音の悪さが目立つ時代

近頃テレビを見たり、ラジオを聞いていると、発音の悪い人が目立って多くなってきた気がします。

それも戦前、戦後の食糧事情があまり良くない時代に育った中高年の人には見られず、景気回復の兆しが現れてきた昭和30年代以後から飽食の時代といわれる現代に生まれた人たちの中に多く見受けられます。

特に、しゃべることを業としているアナウサーやキャスターでも発音の悪さが目立っているのはなぜでしょうか。

アナウサーではありませんが、衛星放送の際、外国放送を同時通訳する人の中にも発音にクセのある人が何人かいて、大変聞き取りにくいことがあります。ある テレビのアナウサーの中には「サシスセソ」と「タチツテト」の発音が区別できず、甘ったるいような、聞き取りにくい発音をしている人がいます。

このような人を気にしてみていると、例外なく歯並びが悪かったり、オープンバイト(前歯が開いている噛み合わせ)である人が多く、特に前歯が叢生(歯並びが悪い)で、犬歯が八重歯になっていて大変気になります。

そんな状況を私たち歯科医師が見ていると、むなしい気がしてなりません。

このような歯並びの状態の人たちは、ただ単に見た目が悪いと言うだけでなく、将来審美性の問題や顎関節症の治療の必要性を抱えた潜在治療困難患者であり、将来必ず歯科治療を希望して来院することが予想されるからです。

哺乳瓶の歴史は100年

人類の進化過程では、自然環境の中で生活し、食糧も動物を捕獲したり、植物を採集し、自然の食物を摂取してきました。

人工的に食物が栽培されたり、家畜が飼われて、それを食糧として生活したのは農耕文化が入ってきた縄文時代以後のことでしょう。

前期弥生の農耕民の遺跡から、親子の牛の遺体が発見されています。土師器文化期になると家畜の飼育が盛んになっていることから、1400年前には牛乳の飲用が行われていたと考えるのが妥当だと考えられます。

そこでは、子どもを育てる場合には母乳による保育が行われていたことは当然ですが、家畜から乳を母親代わりに与えたことも考えられ、与え方も、器から直接飲ませたり、匙のようなもので与えたのではないかと想像されます。

粉ミルクを哺乳瓶で飲ませるのが一般に広まっていたのは戦後になってからのことですが、牛の乳を哺乳瓶を用いて飲ませるようになった歴史は比較的新しく、1897年(明治30年)前後にオランダ製口吹ガラスのものが、ごく一部の人に使われたのが最初と言われます。

それまで竹の筒におかゆ等を入れ、飲んでいました。

進化過程を再現する胎児

宇宙の惑星である地球上に生命が誕生したのは、今から40億年前にさかのぼります。太陽からの紫外線を避けて、海中に原生動物が誕生し、その後デボン紀に硬骨魚類が生まれ、進化をした魚は両性類として陸に上がってきました。その後、爬虫類が生まれ、哺乳類が出現しました。

ドイツのヘッケルは「個体発生は系統発生の繰り返しである」という設を唱えました。それは、卵から発生が進んで成体に達するまでの過程は、その生物が辿ってきた進化の過程を短時間で再現している、というものです。

母親の胎内で一個の卵子と精子が結ばれ、受精卵ができ、生命への第一歩を迎えます。その後、母親の羊水の中で39週間を過ごし、その間12~15週間には、羊水を飲み始めると同時に、生まれてから母親の乳頭に吸い付くための準備運動である指しゃぶりを始めます。

このことは最近の超音波診断器の発達により証明されています。うまれてからは、しばらくたつと手と足を使い上手に腹這いを始め、高這いを経て、体を浮かせ立ち上がります。

これは、あたかも生物の進化過程と同じ経路を辿っています。すなわち、海水中の魚から両生類として陸へ這い上がり、爬虫類を経過して哺乳類となり、直立二足歩行が完成するのと同じということです。

お乳は、吸ってもらって初めて出る

人間の胎児は、哺乳動物としては未熟のまま生まれてきます。つまり、大脳皮質が良く発達しているため、頭が大きく自力で立ちあがることができません。そのためじぶんから母親のお乳を吸いに行くことができず、母親からの授乳により生命が保たれます。

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哺乳という行為は自然の摂理であり、赤ちゃんが乳頭を吸うことにより、下垂体から分泌される催乳ホルモン・プロラクチンによって乳汁が促され、積極的に授乳することで、十分な母乳が出てきます。

小児科医は

「お乳は出るから赤ちゃんに吸わせるのではなく、赤ちゃんい吸ってもらって初めて出るのです」と訴えています。

人間の進化過程で、現在のように人工的に哺乳瓶を用いて母親の代わりに授乳させてきた時代はなく、それは乳児の成長に大きな影響を与えています。

どんな乳頭の形態といえども、人間の乳首に勝るものはありません。

乳児期に良い歯列(歯並び)を作り出す大きながっしりとした顎を母乳により作り上げる必要があります。

母親の胸に抱かれての授乳は、生まれたばかりの赤ちゃんにとって最大の運動であり、額に汗を流しながら夢中になって母親の乳頭に吸い付き、疲れ切ってすやすやと眠りに入ります。

しばらくすると思い出したかのように再び吸い始めます。

この行為は顎口腔系の発達に非常に重要であり、誤った哺乳行動が舌壁を生む要因となります。

その結果、ディスクレパンシー(歯並びが悪くなる)を引き起こし、発音の悪さに大きく関わりあいがでてくるということです。

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国産のニップルは乳頭が長くて穴が大きく、空気孔もあり、努力しなくても乳が出ます。


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NUKの乳頭を舌で口蓋に押し付けることで父が口蓋いっぱいに広がり、歯列を作ります。

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こちらは、NUKのおしゃぶりを吸っている赤ちゃんです。

 


2012年6月 5日

『美の追究』 ~審美と噛み合わせのハーモニー~

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。

当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。

私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。

このブログを読んでいただいている読者の方にお伝えすることが出来ればと思います。

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稲葉繁の審美修復は『ごまかしのテクニック』 、ほとんどが錯視を応用したものであると言っても間違いないでしょう。

これをデンタルイリュージョンと呼んでいます。

私達が患者様の審美修復をするにあたり、実は、遠近法やだましのテクニックをたくさん応用しています。

今回は、遠近法から学ぶ、デンタルイリュージョンについてお伝えします☆

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天才画家北斎も黄金分割や遠近法を巧みに使っています。

『富嶽三十六景』の中にはこのような作品が沢山あり、前景に大きく人物や橋を描き、春か遠くに富士を小さく配置しています。 

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北斎をライバルとしていたもう一人の巨匠、安藤広重の『深川洲崎十万坪』は、驚くほどユニークな構造です☆

この絵を見る人があたかも大鷹となり、この広い景色を俯瞰しているような錯覚にさせます。

このような浮世絵がのちに海外に渡り、その構図の新鮮さや遠近法の巧みさに驚かされ、ヨーロッパの印象はの画家たちに大きく影響を与えたのは広く知られることだと思います。

これらの作品は、歯科技術に おいても大きな影響を及ぼしています。

  

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こちらはへリング図形で、平行な線が放射線と交差すると平行線は直線に見えず、曲線状にかなり強く変形して見える、という図形です。

平行線は膨らんで見えます。


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こちらはブントの図形で、へリングの逆の錯視図です。

平行線は狭窄して見えます。

これらの図形は、焦点を中に集めるか、そとに放散させるかにより、平行な上下の線をどのように錯視させるかを期待しています。

上下の口唇を想像したとき、歯の中心に注意を集中させるか、あるいは唇の上下に分散させるかによって、唇の形と口唇線(唇のライン)に影響を与えます。

1本の歯に惹きつけないようにしないといけません。

自然に唇の周囲と調和をとり、歯を自然に溶け込ませることが、口元を引き締めることになります。

したがって、1本のセラミック治療は、実は大変難しく、口元を引き締めるために沢山の工夫をします。

【遠近法の感覚でとらえる歯並び

 こちらは、ポンゾが1913年に発表した理論で、遠近法を伴う錯視で、大きさの恒常性を錯視させるものです。

 

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黄色い線は同じ長さですが、遠くの方が長く感じます。

このことから、歯並びも同様に注意を払う必要があります。

前歯から臼歯へ移行するに従って、遠近法と同様な現象が認められます。

唇から頬の奥に行くに従い、空間が少なくなり、光も少なくなり、暗くなるので、この現象はさらに現れます。

前歯が大きくてもさほど気になりませんが、奥歯に移行するに従い、徐々に小さく移行させることが大切です。

いかがでしょうか?

遠近法とデンタルイリュージョンについてお伝えいたしました。

次回は、『だまし絵』 を応用したデンタルイリュージョンについてお伝えいたします☆♪

美と黄金分割

レオナルド・ダヴィンチ同様、アルフレヒト・デューラーも黄金比を研究し、作品の構成に使用しました。

この黄金比を使用したおかげで、今でも芸術的な素晴らしさ、美しさを賞賛されています。

これらの芸術的作品の調和は適当ではなく、すべて黄金比に基づいて配置されているといいます。


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デューラーの作品には必ず彼のマークが入ってます。

このマークの由来も円周を等間隔に6等分すると3角が重なって2つでき、その一部をとったものが鳥居の形になります。この線の長さの比率はまさに黄金分割だそうです。

彼は、たくさんの自画像を書いていますが、構成は黄金率が基本となってます。

私は、この『野うさぎ』 の絵が好きです。

昔、高校の美術の時間に模写をした想い出がありますが、この絵も黄金率で構成されているのでしょうね。

そして、黄金比とは、バランスの取れた理想的な値を数値で表すと、1:1.681になります。

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黄金率(1対1.618の比率)は神授比例法とも呼ばれます。

比例とは物の大きさや長さについて、それのもつ量と量の関係を指す言葉で、調和の根本となる釣り合いのことです。

ある量が他の量に対して一定の比率を持つとき、私達はそこに美を感じます。

この時、人は釣り合いが取れているとか、均整が保たれていると言います。

これは部分と全体の関係についても言えますし、部分対部分についても言える概念だということです。

 

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こちらは、北斎の「神奈川沖浪裏」 この作品も黄金率で構成されているそうです。

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自然界に見られる動的均斉で代表的なオウム貝もそうです。

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そして、歯が一番綺麗に見える黄金比もやはり、 1:1.681。

前歯の2本が1、側切歯が0,681です。

人間の歯は本当に神秘的です。

一番美しく見える黄金率を持っているのですから。

まさに、審美の法則だと思います。

今回私は、自然界の法則と審美歯科の密接な関係を勉強することができました^_^

美は、奥が深いです☆♪

『美の追究』 ~審美と噛み合わせのハーモニー~

1991年から4年間に渡り、歯科の専門誌に『美の追究』というタイトルで、当院顧問の稲葉繁が、審美歯科について連載させていただいておりました。

当院の審美歯科治療は、すべて、このコラム『美の追究』を原点としております。

私たちが考える、審美歯科は、歯を白くするだけの技術ではなく、もっと根本的な審美の法則に基づいております。

このブログを読んでいただいている読者の方にお伝えすることが出来ればと思います。

☆ 彡:・;.*:・。゜゜・:゜*:。゜.*。゜.o。・。゜。o.゜。・*。・゜.。☆彡

歯科から見たダヴィンチの業績

レオナルド・ダヴィンチはイタリアが産んだ天才画家として知られています。

彼は、画家、彫刻家、建築家、軍事技師、舞台設計家、音楽家、物理学者、作家、数学者、地質学者、天文学者、解剖学者、自然史科学者として、その生涯の中で多種多彩な業績を残している人物です。

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こちらは、ヴェロッキオのキリストの洗礼で、左側の天使がレオナルドが書いたものですね。

天使の絵はヴェロッキオよりも優れていると言われた、レオナルドの初期の絵です。

私も、イギリス、ウィンザー城でダヴィンチ展を見る機会がありました。

お城を囲む大行列、 あまりにも素晴らしすぎて、みんな見入ってしまい、1分に一足しか進まないので、大混雑だったのを思い出します。

レオナルドの業績の中で、私達歯科医師に関係する範囲は解剖学と、人体比例学です。

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晩年、彼はあらゆる年齢層にわたる男女を30体以上解剖したの述べていて、その解剖所見を詳細に記録し、当時は手に入りにくい鏡に映さなければ読めない文字、、鏡文字の説明を添えています。

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歯科の分野では、頭蓋骨の立体観察図は見事で、顎骨や歯の形態、噛み合わせの状態を正確に表しています。

また、唇や舌の形態と機能、重たい頭蓋骨を支える筋肉と骨、腱の構造は現在の顎関節症から考察すると、とても興味深いものです。

さらに、レオナルドの仕事の中で代表的なものに人体比例学があり、顔の分析、人体の各部の長さを相互に比較し、基準を設けています。

スフマート、そして人体比例学は歯科の分野でもきわめて利用価値が高いものです。

歯を失ってしまった方、歯の治療で全体的に噛み合わせが低くなってしまった患者様にレオナルドの人体比例図は非常に利用価値が高いです。

噛み合わせの高さがわからなくなってしまった患者様の顔の形を人体比例法により計測します。

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頭の長さ、頭のてっぺんから顎の長さの半分の位置は眼角で、目を閉じた時の瞼の合わさった位置は頭の半分です。

顔の3つの部分に分けられ、真ん中に位置している鼻の長さ、鼻根点から鼻下点までの距離、鼻下点から頤下端の距離、鼻根点と顔の上端と等しい、さらにこの長さが眼角から口唇線の距離と等しく、これが耳の長さとも等しい。

ということは歯科治療にとってかなり利用価値が高く、特に噛み合わせの高さの決定の目安となります。

解剖図や人体比例学などを研究したことにより、『モナリザ』 のような素晴らしい女性が描かれたのでしょうね。

1452年4月15日に生まれ、1519年5月、67歳で生涯を閉じ、世界はこの世で最も偉大な科学者を失いましたが、イギリスのウィンザー城には226枚の手記と解剖学のデッサンが数多く残されています。

またぜひ、訪れる機会があればと思います☆♪

2010年11月24日

口腔衛生にもっと関心を

稲葉繁先生が日本歯科大学第2補綴講座助教授時代、毎日新聞の夕刊に掲載された記事です。

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その内容をご紹介いたします。

【歯みがきとうがいが大事】

国語辞典で「におい」とひくと、二つの漢字がでてきます。「匂い」と「臭い」。音は同じでも、意味は正反対です。一方は心地よく、他方は顔をしかめます。 もちろん口臭は後の方。その発生のメカニズム。どうしたら「臭い」を消して「匂う」ようなさわやかな息にできるのでしょうか。歯や歯ぐきを健康に保てるの でしょうか。

においとは何でしょうか?

「においは目に見えず、形がなく手でも触れませんが、科学物質の粒子です。正体不明のものではなく、ちゃんと化学的に分析できるものです。においは原因があるわけですね。」

それでは口臭の原因は何なのでしょう。

「口臭には内臓などの病気による場合やニンニク、タマネギ、アルコールなどの摂取からくるものもありますが、最大の原因は口腔内の清掃が不十分で食べ物、飲み物のカスがたまって発生させるのです。」

どんな状態なのですか?

「口の中は温度も湿度もあって、細菌が住むには好都合なところですが、これに適当な隠れ家があれば言う事なし、です。食べ物のカスが歯の間に残っていればピッタリの条件。すると、そこからメチールメルカプタンという揮発性硫黄化合物が発生。これがいやな臭いの素なのです。」

なるほど。ところで特に朝起きた時に口が臭うのには理由があるのでしょうか。

「寝ている間はだ液の流出が少ないために、だ液の自浄作用が衰えるのが大きな理由です。だから寝る前に歯をみがき、うがいをするのが大事なのです。」

口臭の出やすい人というのはいるのでしょうか?

「非常に歯並びの良い人ですと、唇の動きで歯の表面をこすって前歯の部分はかなり清掃されますが、だいたい歯並びのいい人というのは三割ぐらいしかいないでしょう。」

すると口臭防止の対策は?

「歯磨きとうがいはとても大切です。歯磨きだけでは届かないところがある。そこをうがいできれいにする。 うがいに使う液の中に細菌の繁殖をおさえる成分が入っていればなお効果的です。うがいについては、日本人はまだ軽視しているところがありますが、欧米はう がいの先進国。良い洗口液もあります。日本でもこれから高齢社会を迎え、歯磨きがしづらい人も多くなります。うがいについてもっと認識を深めてもらいたい ですね。」

歯磨きは面倒だが、うがいなら簡単という人もいるようですが。

「やはり歯磨きは大事です。ただ、一週間全く歯をみがかずにいて、歯の汚れを調べた実験で、洗口液だけは使っていた場合には、かなり汚れが落ちていましたから、効果は大きいと思います。」

歯磨きで取りきれない汚れもあると思うのですが。

「歯科医院で定期的に衛生士にチェックしてもらう必要があります。歯磨きで取りきれない汚れ、硬くなってしまった歯石は自分ではとれません。ほうっておくと、口臭だけでなく、歯周病が悪化してしまうこともあります。」

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きれいにお手入れされた歯は自分もまわりも気持ち良くするものです。

歯みがきもうがいもしないと、きたない歯になりやがて入れ歯になってしまいます。

そして、口臭があると楽しいデートや友達とのショッピングなど台無し。

ぜひ、毎日歯みがきをして、しっかりうがいをしてください。

稲葉歯科医院では口臭に対するアドバイスもしております。

口臭で悩んでいるあなた、きっと解決する方法があるので、私たちに相談してくださいね。

2010年9月28日

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家庭画報の医学の話題というコーナーで稲葉繁先生が以前取材された記事です。

自分の歯をできるだけ保つ方法についてくわしく書かれています☆

 

◆医学の話題

自分の歯を保つ方法~入れ歯で悩まないために~

  生きていくためになくてはならない歯。いくら歯科技術が発展しているとはいえ、自分の歯に優るものはありません。入れ歯にしたことで、噛みあわせが悪く なったなどのトラブルは絶えません。そこでまず自分の歯をできるだけ多く残すにはどうするべきか、また入れ歯にする場合、トラブルを少なくする方法を取材 しました。

【自分の歯で噛んで筋力の老化を予防】

「白いっていいな」というキャッチフレーズは、こぼれるような真っ白い歯のイメージ。いまでは歯並びのいい真っ白い歯は、健康美そのものの象徴ととらえられています。

しかし、これまで日本人には歯を大事にする価値観が希薄だったと稲葉先生は指摘します。

「歯は単に物を噛み砕くだけではなく、美的感覚にも大きな影響を及ぼします。目は感情の質を、歯は感情の量を表す、といわれるように歯はコミュニケーションの一部ともいえます。健康な歯を作り大事にするためには自己管理することが基本です。」

日本では愛くるしいととらえられている八重歯も欧米ではドラキュラといわれ、歯に対する自己管理の悪さを公言しているようなものです。

また日本人の癖として笑う時、口元を手で隠すことがありますが、こうしたしぐさも実は日本人の歯に対する自身のなさを表しているのかもしれません。

歯がなくなったら、入れ歯にすればいいとか、何本か残っているのが面倒だから総入れ歯に、などと考える人もいるようですが、大きな間違いです。

噛むという動作は健康にとってはとても重要で、噛むことによって筋力の老化が予防されます。また、噛むことで上下の歯がぶつかり合って、その衝撃は顎から頭につながり、頭蓋に吸収されます。その結果、脳が刺激を受けるわけです。

本来のははとても精巧にできていて、歯には歯根膜と呼ばれるセンサーのようなものが働き、何か異物が混じったときなど、すばやく口の動きを止めることができます。歯が抜けてしまうとこうしたセンサー機能も失われますので、想像以上に不自由なものになるわけです。

若さと健康を保つためにも、自分の歯を一生使えるようにするためにも、歯をきちんと自己管理する努力が基本といえます。虫歯や入れ歯をするため、あわてて歯医者に駆け込むのではなく、日頃から予防のために歯医者さんと付き合うことが重要といえます。

【歯周病が入れ歯の原因 予防は歯垢チェックで】

最近、テレビのキャンペーンでもお馴染みになっているのが「8020運動」です。これは、80歳で20本のはを保とうという運動です。使える歯が20本以 上あれば、不自由を感じないでたいていの物は食べられるという「歯が何本あれば噛めるか」という調査結果に基づいたものです。

21世紀には、日本は4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えます。平均寿命は80歳以上となっても、歯がボロボロというのでは、健康な高齢社会と はいえません。そこで、なんとか自分の歯を20本保とうという運動が繰り広げられているのですが、現在は80歳で6本というのが実態です。歯が20本保っ ていればたいていのものは食べられるということで、超高齢社会の到来に向けて「8020運動」が展開されているわけです。

歯を失う平均年齢を調査した統計によると、最も早く失われるのは下顎の一番奥の大臼歯で女性の平均が41歳、男性では44歳となっています。全体的には 50歳のころから抜け始め、65歳までにはほとんどが抜けているようです。しかし、歯がなくなれば入れ歯をすればいいと考えるのではなく、今から自分の歯 をどうやって保つかを考えることが、より大事だといえます。

歯を失う原因の第一は歯周病(歯槽膿漏)です。歯周病は歯を支える歯周組織そのものが破壊されるもので、歯の成人病ともいえます。50代の人の70%はかなり進行した歯周病にかかっているといえます。

歯周病は大きく2つにわけることができます。ひとつは歯ぐきだけが冒されている歯肉炎で、もうひとつは歯を支えている歯槽骨まで冒されてしまう「歯槽膿 漏」です。こういった歯周病の元凶といえるのが、歯を磨いても取りきれずに残ってしまう汚れ、つまり歯垢です。歯垢は成分の80%が細菌からできていて、 適度な温度に保たれている口の中は細菌の絶好のすみかになっているのです。この歯垢となる細菌から産出される乳酸がカルシウムとたんぱく質からできている 歯を溶かしてしまいます。

歯肉炎は歯を磨いた時に歯肉から出血しますが、痛みはそんなに感じられません。歯肉炎を放置しておくと、炎症は歯肉の深い部分まで進み、歯と歯周組織を結 んでいる繊維を破壊され、支えのない歯はグラグラして咀嚼がうまくできず、末期になるとちょっとした疲れや風邪などで、歯肉は腫れ、痛みを繰り返し、つい には抜歯に至るわけです。

歯周病予防のためには、歯垢を定期的に取り除くことと、自覚症状のない歯周病を早期発見し、治療することです。歯周病を自分で見つけるには次のような症状が手がかりになります。

  1. 歯を磨いた時や堅いものを噛んだとき、血がでる。
  2. 歯肉の色が暗紫色にかわっていたり、歯肉が腫れている。
  3. 歯肉がむずがゆく、指で押すと気持ちよく感じる。
  4. 歯肉を押すと歯と歯ぐきの間から膿や血が出る。
  5. 物を噛んだり、指で触ったりすると歯がグラグラする。
  6. 体の調子のわるい時に歯肉が腫れたり浮いたりする。

こうした症状を感じたときは、早めに歯科医院を訪れ、歯周病の治療を受けることが大事です。

【入れ歯のトラブルを防ぐ】

最近の歯科技術の進歩は目覚ましいものがあり、治療や材質はかなり進歩しています。義歯も一種の道具である以上、十分使いこなすためには知識が必要です。

まず、人工歯の材料ですが、保険のきく合成樹脂からつくられた硬質レジンと保険がきかず費用的には高いセラミックスに分けられます。

硬質レジンの場合、保険適用されるので安めですが、2~3年経つうちに変色し始め、自分の歯と人工歯の区別が出るようになるのが難点です。一方セラミック スの場合は10年たっても変色することはありませんが、一本10万円以上かかり、費用的に高額になるのが難点といえます。

抜けた歯が数本でまだ残っている歯がある場合、取りはずしのできる部分床義歯を入れますが、テレスコープ義歯とクラスプ義歯の二通りの方法があります。

クラスプ義歯というのは、自分の健康な歯にばね(クラスプ)をかけて義歯を固定する方法ですが、長い間には、健康な歯をグラグラにしてしまう危険性があります。

もう一つのテレスコープ義歯はまず自分の歯に金冠をかぶせ、人工歯を接着した外冠をはめ込む仕組みです。残った歯を大切にすることができますが、費用としては一本の歯に15万円前後かかるのが問題といえます。

金額的な問題は別にしても、入れ歯に対する不満は次のようなものが代表です。

  • 痛くていれられない
  • 口の中に傷がつきやすい
  • 取り外しが面倒
  • 食べ物の味がわからない
  • 食べ物の味がかわる
  • 発音がうまくできない
  • 噛めない

 こうしたさまざまな入れ歯のトラブルのなかでも、現行の医療制度のなかでの三大トラブルといえば、

  1. 患者さんとの対話や説明不足による問題
  2. 保険と自費診療に関わる問題
  3. 歯科医の治療内容、技術技能不足の問題

と指摘されています。

この点に関し、稲葉先生はこうアドバイスしています。

「歯周病で歯ぐきがグラグラになり、骨がなくなってから入れ歯をするのは避けなければいけません。ですから、まだ土台がしっかりしている 間に、補強するための義歯をいれるべきです。基本的に軽くて小さい入れ歯は骨を傷つけやすいようです。入れ歯は、強さと大きさが肝心で、そのためには担当 医とよく相談して、治療の最終目標を定めることです。当然、担当医は自分の歯をどう保つべきか、コンサルタントをよくしてくれる人を選ぶべきでしょう。や はり、歯科治療の根本はインフォームドコンセント、(説明と同意)ですから 、しっかり話すことです。」

【三つの方法で予防して自分の歯を保つ】

歯の成人病ともいえる歯周病をどう防ぐかは、日頃からの努力がとても大事です。

歯が抜ける原因は、虫歯と歯周病とに大きく分けられますが、最近、虫歯によるものは治療技術の進歩で少なくなっています。問題は歯周病ですが、予防のためには次の三つの手順でいつも口腔内を清潔に保つことが大事です。

まず、ていねいなブラッシングをこころがけ、次に、歯の間の歯垢を糸で取るフロッシングを励行することです。最後に口腔内を洗浄液ですすぐリンシングという三つのケアを毎日、歯磨きのときに、習慣づけることです。

この三ケアで歯肉炎や予防することができます。さらに定期的に歯科医院へ行き、スケーリング(歯石除去)を3カ月毎に行うことです。また、歯周病を予防す るため、歯茎が健康な間に、正しいブラッシング法をマスターすることも必要です。歯周病予防のためには、スクラビング法とバス法の二通りの磨き方がありま すので、自分に合った方法を身につけたいものです。

スクラビング法は歯周疾患の治療に効果があり、バス法はある程度、歯周病の症状が進んだ場合に効果的です。

ブラシの素材は、細菌から歯肉を清潔に守るため、自然毛のブラシより、ナイロン製のものが一番です。また、電動歯ブラシも効果的といえます。

【歯の悪さは万病のもと かみ合わせがポイント】

口の中は、想像以上に細菌がはびこっています。虫歯を放置したままにしておくと、細菌が血液中に入り、全身に細菌をばらまく「歯性病巣感染」にもなりかねません。

また、かみ合わせなどの咬合異常から全身に異常をきたすこともあります。かみ合わせが悪いということは、顎が不正な動きをしているということで、やがてバランス異常を起こし、体全体のバランスが崩れる連鎖反応を引き起こします

バランスが崩れると、首の筋肉は緊張し、頸椎の変形が起こり、やがて全身病につながります。

頭痛、肩こり、筋肉痛、腰痛が起きたり、神経が圧迫されることによって、手足の指がしびれるという症状も出てきます。また顎関節症(顎の疾患)の深いな痛みを覚えることもあります。

よく義歯を入れた時に感じるかみ合わせの悪さも、そのまま放置していると、さまざまな全身病を引き起こす原因にもなりかねません。こうした場合は、修復をしたり、作り直すことが必要です。

とにかく、自分の歯で一生、物を食べるためには40代からの予防と検診が決め手になることは、間違いありません。

「虫歯や歯周病は、バクテリアによる感染症です。ですから口の中は、いつも清潔にしておくことが最大の予防といえます。歯が痛くなったり、入れ歯のために歯科医に通うのではなく、自分の歯を生涯使うため、予防と点検のために歯科医に通うよう心がけるべきです」(稲葉先生)

 

 

2010年8月31日

この記事は、1982年6月号の家庭画報に掲載された対談です。

稲葉繁先生が、日本歯科大学第2講座助教授時代に「専門医への質問状」というコーナーで答えたものです。

まだ「顎関節症」という言葉がなく、「咬合病」と呼ばれていました。

稲葉先生はそのころから「かみ合わせ」について研究してきました。

1982年当時、記事の中で稲葉先生は

「咬合病時代が新しい分野ですからね。ここ10年なんですよ、やっと研究が始まったのですが。歯科医のなかでもわからない人もいます。その辺は今後の医学に期待してください。」

と話しをしています。

その後、顎関節症の勉強をするためにドイツに留学しシュルテ教授のもとで学びました。

今後の医学に期待の言葉通り、顎関節症で悩んでいるたくさんの患者様を治し、現在に至っています。

その1982年の記事は現在の顎関節症の悩みに答えたものです。

ぜひ、読んでみてください。

 

「専門医への質問状」

頭痛・腰痛も起きる歯の病気「咬合病」

頭痛、首筋のはり、腰痛などに悩むあなた。

ひょっとして歯のかみ合わせが悪いのでは・・・・。

物を噛むというのは顎を上下、左右、前後に微妙に動かす動作。

ちょっとバランスがくずれると、全身のあちこちにさまざまな症状が現れることがあるといいます。

今月は、今注目されつつある「咬合病」です。

◆悪いかみ合わせで歩き方までかわることが

肩こりや頭痛などの不定愁訴の原因に、かみ合わせの問題があるとうかがいましたが・・・・。

「ええ。私たちは咬合病」と呼んでいます。歯が物を噛む時には、上下だけでなく左右前後に微妙に顎が動いているんです。ところが、歯のかみ合わせが悪い と、顎に加わる力のバランスがくずれてしまいます。それで、歯やこれを支える歯槽骨、筋肉、顎関節、その周囲の組織、器官、神経、血管などに異常が起こる わけです。それが原因で、全身にさまざまな症状が現れるのが咬合病です。」

どのような症状があるのでしょう。

「思いもかけない痛みの原因になっています。歯痛や顎関節の痛み、口が開きにくいなどという症状は安易に想像がつくと思います。ところが、鼻の周囲がつ る、耳の後ろの筋肉や首筋がはる、さきほどご指摘の頭痛、肩こり、手のしびれ、舌のヒリヒリした痛み、灼熱感、それに腰痛まで起こることもあります。」

顎の関節のゆがみが、どうして腰痛まで起こるのですか。

「簡単にいいますと、頭の位置の問題なんです。人間の頭は、肩から垂直に立っているでしょう。これをバランスよく支えているのは、脊柱です。ちょうどサク ランボを逆さにしたような形ですね。それが、顎関節のバランスがくずれると、筋肉や力の不均衡などによって頭まで傾斜してしまうんです。で、これを脊柱が 頑張ってもとに戻そうとする。すると脊柱が変形するというわけです。 腰痛だけでなく、歩き方まで変わるのですよ、背骨が曲がって」

◆かみ合わせが原因とはわかりにくい。

すると、症状から原因を判断するのは、なかなかむずかしいのでは・・・・

「そうなんですよ。ちょうど、内科と歯科の境目にある病気なんですね。ですから、歯科に行きあたるまでが、たいへんむずかしい。腰痛で歯科医を訪れる人 は、まずないでしょう。 私のところに来る患者さんも、ほとんど、整形外科や耳鼻科、内科を回ってきた人たちです。なかには、人間ドックにまで入って検査 を受けたけれどわからなかったという人もいます。  これが、また病気の精神面と大きく関係してるんですよ」

というと、心身症とも関係があるのでしょうか。

「そのとおりです。咬合病の患者さんには精神的に不安定な人が非常に多い。CMIという健康調査を行うと、憂鬱、希望がない、自殺したい、怒りやすいなど という結果が出る人がほとんどです。  そのうえ、さきほど申し上げたように痛みの原因がわからないでしょう。ノイローゼぎみになってしまうんです。これ はガンじゃないか、何か悪い病気の兆候じゃないかと、一人でクヨクヨ思い悩んでしまうんです。それでますます精神状態が悪くなるのです」

精神的な問題が咬合病を引き起こす引き金になると・・・・。

「いえ、それはニワトリと卵のようなもので、どちらが先とも言えません。 しかし、私の考えでは、病気によって心のゆがみも起こるのではないかと思いま す。歯のかみ合わせを治して症状がよくなると、精神状態もよくなりますから。 それから、原因不明の痛みに対する恐怖感ですね。ある奥さんは、舌がヒリヒ リ痛むのでお医者さんに行ったのですが、原因不明。それで舌ガンではないかと夜も眠れないほど悩んでいたのです。  ところが、私のところで咬合病だとわ かったとたん、気分がすっきりしたと言っていました。こういう人はとても多いのです。患者さん自身がまるで歯科に対する知識がないでしょう。説明だけで、 たいてい晴れやかになるんですね」

◆20歳前後と50歳前後の女性に多い

内科や整形外科では診断できないのですか。

「咬合病自体が新しい分野ですからね。ここ10年なんですよ、やっと研究が始まったのが。ですから歯科医のなかでもわからない人もいます。その辺は今後の医学に期待してください」

では、自分で咬合病かどうか、判断する方法はありますか。

「あります。歯のかみ合わせが悪くなる原因は、悪い歯並びや歯の高さの違いにあります。つまり、抜けたまま放置しておいて歯並びが悪くなったとか、親知ら ずだけ背が高い、あるいは治療のしかたが悪くて、歯の高さが狂うとか。かみ合わせたときにどこかが他の歯より早くあたってしまうのが原因です。  という ことは、その部分の歯があたらなければ、咬合病の症状も出てこないということです。 ですから、一週間ぐらい大豆大の綿を唾液で濡らして歯の上に置いてお くのです。それで症状がよくなれば咬合病ですね。 それから、咬合病は20歳前後と50歳前後の女性に多いんです。50歳前後の人はちょうど更年期と重な りますから、更年期障害と間違えないことですね」

家庭でも治療できますか。

「重症なものは無理です。根本的にかみ合わせを治さないと。 けれど、顎関節がズレている人、つまり潜在的な咬合病の人は非常に多いんです。こういう人 は、まず真っ直ぐあお向けに寝ること、硬いものや大きいものを食べないこと、頭が水平になるように低い枕を使うことです。歯ぎしりをする人は特に要注意で すね。  それから、治療というのは、医者と患者が半分ずつ責任を負うことです。私たちも心身両面から治療をしますから、患者さんの方も協力していただか ないと」

2010年8月26日

日本歯科新聞に掲載された記事をご紹介します。 20年以上前の新聞ですが、「高齢化先進国」についてかなり詳しく書いてあります。

今まさに日本が直面している高齢者社会を予測していた内容で、非常に興味深い内容です。

ぜひ、読んでみてください☆

 

我が国で初めて「高齢者歯科」を設けた日本歯科大学前教授がドイツ、イギリス、スイスなどヨーロッパの歯科事情を視察し、我が国の歯科医療の現状を踏まえて所感を語りました。

根本的に違う老人対策

日本で初めて高齢者歯科の診療科目ができ、わたしの専門は、この高齢者歯科となったが、これから日本は高齢者がどんどん増えてくる状態なのに、医療面では手探りの状況下にある。

そこで、高齢化社会の先輩であるヨーロッパを今回、視察してきた。ヨーロッパは長い歴史をかけて、高齢者が増えてきた。

フランスは全人口の7%が65歳以上となってから14%になるまで125年かかったといわれている。

一方ドイツでは50年ほどである。日本ではわずか26年である。このため、これから高齢者にどう対応するか手探りの状態だ。そこで、ヨーロッパでは、学生教育がどうなっているのか。あるいは在宅診療がどうなっているのか調べたいと思ってきたわけである。

わたしは、イギリス、ドイツ、スイスの3カ国を回りもう一人鈴木正直講師がフィンランドへ行った。

人口6千万人の小さな国であるが、高福祉が進んでいる。

日本はどちらかというと、社会の構成が団体的だ。フィンランドは個人単位である。このため日本としてもかなり参考にすべき点もあると視察することになった。アンケートもとってきた。まだその結果はでていない。

ヨーロッパには、高齢者のための国際的な学会がある。そこで、高齢者を専門にやっている先生に会って話を聞いてきた。また老人の施設も見てきた。

日本とヨーロッパでは根本的に違うことを、今回、改めて認識した。日本の場合、医療や技術、ハード面の器械類はとても進んでいると思う。世界的にもトップレベルにあるといえる。そこで、ハード面施設面ではそれなりに医療を行ってきている。

しかし、老人の治療はそれだけではダメで、つまり、病院を作るにしてもその周辺の施設がどうであるかが問われる。病院では、1日45分のリハビリしか、健康保険で許されていない。

寝た切り老人の原因となる大きな問題は、脳血管障害である。ヨーロッパでは一番の原因は骨折だ。大事なことは脳血管障害となったらそのあとのケアーをできるだけ早くし、寝たきりにさせないことである。

リハビリをして、体を動かして治療をするわけあるがそれを日本では、病院の中だけでやろうとする。一方、患者の生活の場はベットの上だけだ。どうしてもベットの上に寝てしまう。食事もベットの上だけだ。本来なら食堂があればよいが、それがない状況だ。

ベットの範囲しか生活の場がない。当然寝たきりになりがちだ。介護されると気持ちの上でも楽になってしまう。ヨーロッパでは寝たきりにはさせておかない。無理して起こしてしまう。

そして、ベット以外の老人たちの談話室や外に散歩する道もたくさんある。その中で、自分に課せられた運動を一生懸命やっている。できるだけベットにいる時間を少なくするようにしている。このため寝たきり老人はほとんどいないわけである。

高福祉化で医療が低迷

ドイツでは、高齢化歯科は併設されていない。しかし、軍隊があるので、訪問診療、出張診療には慣れている。ハンディーな治療器具も整っている。また日本と違ってホームドクターという制度があるため、診療所を患者さんが渡り歩くということもしない。

そこでホームドクターの役割は、一生その患者さんの面倒をみることになる。日本は、その患者さんが寝たきりになったらどの医師が診るのか決まらない。ホームドクター制度がないので、かかりつけの医師がいても、なかなかいない。

日本は近いとタクシー代が出るが、ドイツは反対に40キロ超えるとタクシー代がでる。ホームドクターが近くにいるから40キロ以上の特殊なケースしかタクシー代がでないのだ。

また日本では予防に保険の報酬が払われない。スイスの場合は。予防にしか保険が支払われない。補綴はすべて自費だ。

日本のように薄く、広くバラまくという考えはよくないと思う。特に、その点イギリスは悪かった。ナショナルヘルスサービスで揺り籠から墓場までという高福祉を行った。

あれは、歯科医にとっても評判がよくなく、患者さんにとっても好ましくなかった。財源がなくなったために、歯科は25%給付で、75%が自己負担だ。

日本は評価が低く、すべて保険なので、がんじがらめである。しかし、イギリスを見てきて、日本は良い国だと思えるようになった。つまり、日本ではまだ、患 者さんに現時点で最高の治療をやろうと思えば、できる余地がある。つまり、保険がきかなければききませんよ、という余地がある。医療とは、現時点で最高の 治療をやるべきだ。

保険だけというのは、技術の出し惜しみである。やってあげたくてもやってあげられないのが保険診療でのジレンマだ。イギリスでは高福祉で広くバラまいたためできない。患者さんが、健康に対する価値観さえ持てば、やれる余地が日本にはまだある。

日本は民間保険を国が認めている。歯科医にとって光が見えてきたと評価したい。民間保険を必要としないというケースでは、歯科医と患者さんとの信頼関係で行う。

予防で実績高いスイス

スイスは予防に熱心で、子供から徹底的に努めておりむし歯は10年前の75%減少した。賛否両論があると思うが、これはフッ素によるものだ。まずフッ素を食卓塩に入れたそうだ。また、フッ素の錠剤を食後に噛ませた。

だから、もしむし歯になったら自費で直しなさいという考え方だ。国が予防の方向に力を入れ実績をあげたのだからあとは自分たちでやりなさいというのがスイスである。

つまり、イギリスとスイスは正反対であった。ナショナルヘルスサービスの財源はいわゆる17%の付加価値税からきているのだ。

いずれにしても、イギリスは低迷しており、スイスのような予防を主眼としたヘルスサービスにもっちきたいとの考え方もあり、多様化しつつある。

一方西ドイツでは、国際デンタルショーに参加したが、実に立派な内容であると思った。10ホールあり1回ではとても回り切れなかった。あれだけの規模のものを見ると歯科医療はまだまだ広がりを持つものだと、強く感じた。診療部門より技工部門がかなり注目されていた。

器材の流れは注目されたがドイツでは、技工部門の引き締め行われていた。全顎のゴールドブリッジが保険でカバーされていたが、テレスコープなどは1顎4本までがゴールドでできる、というようになった。

そして、その5割を患者が払うことになった。日本はまだ、そこまでもいっていない。ドイツは技術評価がとても高い。このため、歯科医も技工士もやりがいがとてもある。

日本は総義歯が13000円程度だ。ドイツとは比較にならない。日本は保険が質より量となっている。

高質の医療を追及する

日本の場合、一番問題となるのは、6か月ごとに義歯を新たに入れることができる制度となっている。

このために、生涯に多くの義歯を作り変えることになってしまう。患者さんもだから多少合わなくてもいいんだ、という考え方をしてしまう。これは恐ろしいことだ。

これよりも、たった1個の義歯でも、それがすごく長持ちをして、口の中で具合よく機能している質の高い補綴物の方がずっとよい。

ドイツ人のそのような考えによって生まれたのがテレスコープシステムだ。

安易な治療をバラまくのではなくよい治療を行うべきだ。国民の医療費が国によって決められている以上、保険医が増加をしつづけ、それを分配しているより、全然、決まっていない医療費(自費)を、よい治療をやって、患者さんに感謝されて、報酬を受けた方が望ましい。

 

2010年2月25日

メンテナンスについて

先日、自宅のガスの湯沸かし器の調子が悪くなってしまい、、ガス会社に電話して修理にきてもらいました。

「ガスの湯沸かし器械がだいぶ汚れていて、部品も劣化していて取り換えなきゃだめですね。」

とのこと。

やはり、ガスの湯沸かし器も年に一度のメンテナンスが必要ということです。

きちんとメンテナンスしていれば器械をとりかえる必要はなかったと思うし、かえって高くついてしまいました。

これって歯のメンテナンスと一緒ですよね。

せっかく治したと思った歯周病や虫歯がしばらくしてまた悪くなってしまい、もっとひどくなってしまっていた・・・・なんて経験ありませんか?

治ったと思った歯周病は生きている限り、食事によって歯垢(プラーク)はつくし歯石もたまります。

定期的なメンテナンスでは、歯垢もやわらかくとりやすいのですが、一年以上たってしまった歯石は硬くなってしまうため、また最初から治療しなくてはいけなくなります。

綺麗に被せたセラミックも、ほうっておくと歯肉が腫れてしまったり、歯周病で歯がぐらぐらしてしまうことだってあります。

入れ歯の場合もメンテナンスはとても大事です。

せっかく作った入れ歯も、メンテナンスをしないと土台になっている歯が歯周病になって抜けてしまいます。

稲葉歯科医院のリーゲルテレスコープは抜けてしまったとしても修理ができますが。普通の保険治療の入れ歯では抜ける度に作りなおしが必要になります。

そのため、歯を一本でも失わないためにもメンテナンスが大切です。

安心してメンテナンスをうけて入れ歯を長持ちさせるか、歯を失いながら何度も作りかえるのとどちらがいいでしょうか。

稲葉歯科医院では3か月に1度のメンテナンス(定期検診)をおすすめしています。

メンテナンスの手順は

1. まず、患者さんのお口の中の様子をお聞きします。
2. つぎにずべての歯を一本ずつ拡大鏡をつかってむし歯がないか確認します。特に歯と歯の間はむし歯ができやすいのでフロスを使い確認します。
3. 超音波の器械を使って歯の表面の歯垢(プラーク)を除去します。
4. 歯と歯肉の隙間(ポケット)が深いところは衛生士がスケーラーという道具を使って除去します。
5. 着色のある歯の汚れをとって器械で磨いて仕上げます。
6. すべての歯に歯間ブラシを通して、歯肉をマッサージします。
7. 最後に、衛生士から、歯磨きの指導などのアドバイスがあり、ご希望によってフッ素を塗布します。

入れ歯の場合も毎回、超音波洗浄にかけ、着色のついた歯は綺麗にみがき、こわれていないかどうかチェックします。

ご自分の歯は生涯を充実させる財産です。人工の歯はいくら高い技術で作られたとしても天然の歯にはかないません。一本でも多くの歯が健康に保たれるように、私たちがお手伝いできたらうれしいと思っています。

入れ歯で歯の予防とは?(予防補綴)

入れ歯で歯が抜けるのを予防することができます。

60歳を過ぎている中高年の方々はすでに、むし歯、歯槽膿漏に かかっています。

その結果多くの歯を失ったり、近い将来歯を失うことが予想されます。

このような場合、全体的に歯を固定して、強くし、それ以上歯を失わないようにする方法があります。

この時、消極的な治療を行い、クラスプ(部分入れ歯を支えるバネ)などを使ってしまうと、せっかく残っている歯にストレスを集中させてしまい、最終的には歯が徐々に抜けてしまうという状態になってしまいます。

そのような場合にはむしろ最大限に介入し(Maximal Intervention)すべての歯を固定して、入れ歯により歯の喪失を予防するような方法がリーゲルテレスコープなどのテレスコープシステムです。

テレスコープシステムを行うことにより、歯を失うことを予防し、歯の寿命を延長することができます。

歯が抜ける度に歯科医院で入れ歯を作りなおすなどのストレスもありません。

PARTIAL DENTURE (部分入れ歯)

 部分入れ歯とは歯が一本抜けてしまったところから一本しか残っていない状態までの取り外しの床がついた入れ歯のことをいいます。

歯の本数が少ない場合、安定が悪いため、両側をバーという金属で補強します。

そのバーの種類についてお話します。

保険で適応されるパラタルバーについて

これは右と左の部分入れ歯をただ、既成の金属でつないだだけのものです。

そのため、かんだ力がそのまま反対に伝わってしまう、悪い設計だと、かんだ力でバーをてこににして、反対の歯を抜いてしまうような力がかかってしまうことがあります。

バーの設計は歯を守るために、実は非常に大切なものです!

バーの種類、設計によって、歯を守るものと、悪くしてしまうものがあります。

稲葉歯科医院では患者様の歯の状態によって、バーの設計をしています。

かんだ力が反対の歯にほとんど力が伝わらないようなバーの設計をして、歯を守ります。

もちろん既成のバーではなくて患者様のあごにあわせたオーダメイドの鋳造床です。

金属の種類は、チタン、金、コバルトクロムがありますが、それぞれ精密で頑丈です。

後パラタルバー(トーションバー)

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トーションバーはねじれた形をしていて、たとえば右側でかんだ力をバーで吸収して、左側にうつさないような形になっています。

アディダスの靴の底にトーションシステムというのがあります。

これは、歩いた時の衝撃をトーションシステムのねじれた形で吸収して前足と後ろ足に伝わらないようして負担を軽減するようなクッションです。

それと同じような考えがトーションバーです。

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上あごの後ろの方にバーがくるので舌のじゃまになるのでは?

と思うかも知れませんが、前の方にくるほうが舌のじゃまになるのです。

前の方にバーがあると、入れ歯の安定も悪く、発音に関与する場所でもあるので話しがしずらくなります。

後ろにバーがあると、入れ歯の安定がよくなり、発音もよくなります。

硬い口蓋骨のところにバーがあり、嘔吐反応もありません。

バーが中途半端な場所にあると気になってしまいますし、軟らかい軟組織にバーがあると沈みこんだりして違和感があったりします。

このバーにより歯全体を強く連結し、守るような形になります。

シュパルテ 

 

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そして、この床の形がシュパルテです。

とても斬新な形で一見これが口の中に入ると違和感を感じそうですが、これが本当に結果がいいのです。

非常にデリケートな方にも受け入れてもらえていて、みなさんそろって「違和感がない」とおっしゃっていただけます。

先日、シュパルテを入れた患者様に使い心地を聞いてみたところ、

「保険の入れ歯を簡易的にいれたら、前の方にバーがあったため、発音がうまくできないし、食事がおいしくなくて、人生の楽しみが半分なくなった感じがし ちゃったよ、この入れ歯になってから、発音はなにも問題がないし、入れ歯が動くことがないからこの前は上海ガニをバリバリ食べたよ!」

アハハハと笑って話して下さいました。

本当にこんな風に感じている方が多いのです。

しかもトーションバーのねじれによって力を吸収するのと一緒で、アルファベットのEの形で真ん中に伸びたところで力を吸収します。

トーションバーも優れていますが、最近は圧倒的にこのシュパルテで対応することが多くなりました。

シュパルテは、リヒテンシュタインのDR.シュライヒ から教わりました。

DR.シュライヒは総入れ歯で非常に有名な先生で、わたしたち家族もとても仲良くしていて、引退された今でも交流があります。

リンガルバー

 

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下の歯に対しては、リンガルバーというバーで対応しています。

上の歯はリーゲルテレスコープで鍵が二つ、そしてリンガルバーによってたわまないようにしています。

バーそ下のほうにもってくることで発音をしやすくしています。

また清掃性もよくしてあります。

バーの設計をしないで、ただ両側をつなげるだけではなんの意味もないばかりでなく、てこ作用によって、歯を抜いてしまうかもしれません。

年をとったら入れ歯。これを当然のことと考えていませんか?

80歳以上の健康で元気なおとしよりが増えている一方、歯は50代で失う人が多いようです。

実は、メンテナンス次第で歯の寿命は延びるということをご存知ですか?一生自分の歯で食べることも十分可能なのです!

歯を失うことは、食べることだけに影響するのではありません。

話すこと、表情、脳の血流など全身の健康に広く影響します。その結果、歯がないことが、楽しく、充実した老後を送るための大きな障害になってしまいます。

歯を失う原因の多くは、歯の成人病といわれる歯周病と噛み合わせの不調和によるものです。

この大敵を上手に予防、発見し治療していくことで、生涯自分の歯で生活することが可能になります。

「もう年だから、歯を失うのもしょうがない」

と考えずに、一本でも多くの健康な歯を残すことで、豊かな老後を満喫したいものです!

【噛むことはこんなに大切!】

歯は全身の健康に関係があります。

健康で豊かな老後を迎えられるように、おとしよりにとって、話すことと食べることはかけがえのないものです。

そこで大切なのが歯の存在です。

不自由なく何でも食べられることと、大きな声で人前で笑えることは無上の喜びです。そのためには歯の存在が必要なのです。

また、歯は単に食べること、話すこと以外にも、全身の健康と深いかかわりのある大切な機能をもっています。

このことは最近になってさらに研究が進んでいて、歯の存在が全身にとって非常に重要であることがわかってきました。

歯があるからこそ噛むことができます。ふだん何気なく行うことですが、ひとつには口の中で食べ物を小さく砕いてだえきの混ぜ、食物をひとかたまりにし、飲み込みやすくするという機能があります。

でも、それだけではありません。

歯の存在は私たちの表情をつくってコミュニケーションを助けます。

さらに全身の健康という意味で重要なのは、噛む動作によるあごの働きです。

噛むときに必要な力は筋肉の老化を予防します。そうです、よく噛めるということは若返り、今でいうアンチエイジングの効果があるのです!

また、上下の歯が強いちからでぶつかり合うとき、下あごの力を上あごがしっかり受け止めます。

このときの衝撃はあごから頭につながり、頭蓋で吸収されていきます。

そのため、噛むことによって脳が刺激を受けることになります。

最近の調査では、現代人の噛む回数は昔と比べて大幅に減っているそうです。

日本では軟食傾向が強まり、噛まない食文化になっています。

軟らかくておいしいとか、軟らかいものがおいしいといった食が好まれています。

これに比べ、ヨーロッパ、特にドイツの食生活では硬いものが好まれています。

硬くておいしい、硬いものがおいしいといった感じでまるで逆です。

そのため、ドイツの入れ歯は自然に硬いものが噛める、硬いものを噛んでもこわれないようなものが使用されるようになりました。

これがリーゲルテレスコープです。

ドイツのリーゲルテレスコープを父稲葉繁がはじめて日本に紹介してから30年近くなりますが、当時治療した義歯が現在も使われていることから、とても長持ちする入れ歯です。

今、歯を失うとインプラントという傾向にありますが、インプラントをしたくない人、また骨が高度に吸収していてできない方もいっぱいいらっしゃいます。

ただ、一般の人にリーゲルテレスコープはまだまだ知られていません。

これからすこしづつ、みなさんにリーゲルテレスコープの良さを 伝えていきたいと思っています。

2010年2月24日

歯科材料の問題点

自分の歯を少しでも多く維持していくことが重要なのはいうまでもありません。

残念ながら一本でも失った場合は、適切な治療、義歯の作成によって残りの歯を守っていくのがさらに大切になります。

最近の歯科材料の進歩により、むし歯の治療法や材質は以前に比べてとてもよくなっています。

むし歯になった歯を自然な外観に修復する場合の治療について考えてみましょう。

まず、患部を削り、歯のまわりに保険のきく硬質レジン(合成樹脂の一種)で人工歯をかぶせるとします。

すると、二~三年たつうちに変色しはじめ、本来の自分の歯と人工歯の区別がつくようになってしまいます。

硬質レジンは水分や熱に弱く、口の中に入った食べ物の刺激で膨張、収縮をくりかえし、そのすき間に色素の沈着がおこります。

これに対してセラミックは熱や酸、アルカリに強い性質があるので、耐久性にすぐれています。

私も実際、セラミックを作る実習に参加したことがありますが、一本作るのに(講義もありましたが)朝から終電までかかりました。

慣れていないということもありましたが、ある程度、歯の形状や色も把握してるはずなのに・・・・こんなに奥が深いんだ・・・・と感じた一日でした。

色も25色ぐらい使って、周波状という天然歯にはある細かい線をいれたり、プロの技工士がつくると一見本物の歯です。

セラミックにも2種類の方法があります。

ひとつは白金加金(ゴールド)にセラミックを焼きつける方法で、もうひとつはジルコニアという天然石を使った方法でヨーロッパ、アメリカでは主流になっていますが、日本では最近認可され入ってきた方法です。

違いはジルコニアは金属を使わないため、透明感がだせるということです。

どちらも生体に安全な材料を使用するため安心してお口の中に使えます。

セラミックは保険がきかないので自費診療になりますが美しさと機能は保険の硬質レジンよりもはるかに勝まさっていると思います。

部分入れ歯をいれる場合

歯を失ったら義歯で補う必要があります。

自分の歯ほどの機能は望めないとはいえ、一本の喪失は、ほかの健康な歯にも悪循環を与えますから、適切に処置する必要があります。

抜けた歯が数本以上で、まだ残っている歯がある場合、取り外しのできる部分入れ歯をいれるのが、一般的です。

具体的には、自分の歯にばね(クラスプ)をかけて、義歯を固定させる方法をとります。

この方法は保険が適用されますが、できるだけ健康な歯を残すという意味では問題があります。

というのは、この部分入れ歯で物を噛むと、入れ歯が下がり、その力がばねを問うして歯にかかります。

歯の動きに合わせて歯を揺らしてしまうことになり、健康な歯をグラグラにしてしまう危険性があるからです。

すでにドイツでは、ばねのかかる方法は歯科大学の授業にもでてこないほど、旧式なものとされています。

自費診療によるリーゲルテレスコープ

一方、残っている健康な歯を痛めないで、長期間グラグラしない部分入れ歯もあります。

これをリーゲルテレスコープといいます。

リーゲルテレスコープのことについては以前くわしく書いてあるので、上のところをクリックしてみてください!

稲葉歯科医院の金属はすべてスイスのMetalor社のものを使っています。

リーゲルテレスコープはMetalor社のオロフロイド3という非常に精度が高く、生体に安全な金属を使用しています。

歯を失うこと、あるいは歯の状態が悪いということは脳にも影響を与え、寝たきりやぼけを招きます。

歯がなくなったら、入れ歯にすればいいとか、何本か残っているが面倒だから総入れ歯にしよう、などと考える人がいます。でもこれは大きなまちがい!一本でも多くの自分の歯を生かすことはとっても大事です。

歯の根には歯根膜とよばれるセンサーがついていて、無意識にものをかんでいるとき、何か固いものが混ざっているなどの異常があると、すばやく口の動きをとめることができます。歯が抜けてしまうと、こうしたセンサー機能も失われてしまうので、想像以上に不自由です。

このセンサーは残念ながらインプラント(人工の歯の根)にもありません。

【8020 20本の健康な歯を生涯保ちましょう】

8020運動という言葉を聞いたことありますか?

これは80歳で20本のはを保とうという、厚生省が始めた運動です。

20本という根拠は、500人のおとしよりを対象に、「歯が何本あればかめるか?」という調査をしたところ、使える歯が20本以上あればたいていの物は食べられるのに、それ以上だと食べられない物がでてきたことによります。

日本での平均寿命から考えると高い目標ではありますが、健康で快適な老後を送るためにも、ぜひ、クリアーしたい目標です!

歯には寿命があるのでしょうか?いいえ、大切にすれば一生もちます!!

年をとると入れ歯にするのが当然、と思っていませんか?

歯は本来、一生使っていくことができるはずの寿命を十分にもっています。

では、どうして歯を失ってしまうのでしょう。

歯のお手入れに問題があり、歯槽膿漏になって歯を失うという場合と、歯を失った時の処置も問題です。

一本でも歯を失ったままにしておくと、失った歯の方向に全体が移動していき、かみ合わせの悪さと歯に加わる微妙な力によって健康な歯も悪影響を与えます。

一本が悪くなったときに、自分の歯に合った最善の治療をしてもらうことで、歯の寿命をさらに延ばすことができます。

「歯は基本的に一生もちます。歯の喪失は老化現象なのではなく、お手入れや治療の問題です」

歯を失う平均年齢を、歯の種類別に調べた統計があります。

親知らずを除外して。最も早くうしなわれるのは、下あごのいちばん奥の大臼歯で、女性の平均が41歳、男性では44歳となっています。

次が隣の大臼歯です。

全体でみると、おおむね50歳から55歳にかけて少しずつ抜け始めます。

歯を失う原因の最大のものは歯周病です。年齢に応じて加速度的にはがなくなっていく傾向が強いです。

昔はむし歯が原因で抜歯をすることも多かったのですが、治療技術の進歩により少なくなりました。

歯周病は歯を支える歯周組織そのものが破壊されるため、重症のものは、抜くよりほかに方法がなくなってしまう場合もあります。

歯周病の怖いところは当初、自覚症状がないうちに進行していくことです。

若い世代でも危険性はありますが、40代くらいからは、定期的に歯科医院に訪れて、予防、治療の指導を受けることをおすすめします。

生涯自分の歯で食べられるかどうかどうか、この中高年の世代での歯周病対策にかかっているといってもいいでしょう。

2010年2月23日

ふだん、あまり感じることはありませんが、歯や口は、わたしたちの健康と深く結び付いています。

日常生活を楽しく送るために、会話はかかすことのできない大切なものです。

歯が抜けたり、むし歯ができていたりしては、なんとなく会話を楽しむ余裕もなくなったり、口を隠すなどして笑ったりしてしまうこともあるでしょう。家族や友人との楽しい会話は精神的な健康にもつながります。

歯、口の病気が直接体に関係することもあります。

子供のころは毎年新学期にむし歯の健診があります。

治さなければならない歯を指摘され、歯科医院へ行くことになるのですが、成人すると、なかなか定期検診を受ける機会がありません。

放置されたままのむし歯は当然悪化し、細菌がはびこります。

歯に穴があき進行すると骨との交通ができ、不潔なものときれいな骨がが交わることになります。

この最近が血液中に入ると、血液が運搬の役割をして、全身に細菌をまき散らしていくことになるのです。

この感染を「歯性病巣感染」といいます。

歯性病巣感染とは歯に穴があくことで細菌が血液の中に入って全身に回り、さまざまな病気や弊害をひきおこします。

臓器移植や心臓病を持つ人などが感染すると生死にもかかわります。

かみ合わせの異常から全身病になることも

感染だけでなく、かみ合わせなどのバランスが悪いと全身に異常をきたすこともあります。

かみ合わせが悪いということは、「あごが正常な動きをしていない」または「正常な位置からズレている」ということです。

バランスはひとつ崩れると次々に崩壊していきます。

現代の人間の脳は約8キロです。

かみ合わせのバランスが悪い状態は、脳を支える筋肉のバランスに影響します。

重い脳を支えるために、筋肉のバランスは良い状態にたもたれていなくてはなりません。

かみ合わせのが悪いと顎の筋肉とつながっている首の筋肉が緊張します。

筋肉のバランスが崩れたことにより生じる症状

①頭痛、肩こり、筋肉痛に悩まされることになる。

②姿勢がわるくなるので腰に負担がかかり、腰痛がおこる。

③神経が圧迫されることにより、手足の指がしびれる。

④顎関節症(あごの疾患)の痛みを感じる。

また、あわない入れ歯を我慢して無理に使っていたりしてもかみ合わせに異常がおきることもあります。

入れ歯を作る際には高度な技術とたくさんの時間と手間をかけて作られます。

歯があったときのかみ合わせの位置、感触などはもうわからないので、いろいろな方法で計算したりして確認します。

それでも人工物は天然の歯にはかないません。

ご自分の歯を一本でも多く保ち、機能させるのが一番大切ですね。

2010年2月10日

8020の鍵は部分入れ歯です。

8020運動って聞いたことありますか?

80歳で20本の歯を保とう。20本の歯があればたいていのものは食べることができるということで厚生省がはじめた運動です。

80歳で20本の歯を保つことができるには部分入れ歯が鍵になります。

歯の抜けるのは老化現象ではありません。

歯の抜ける原因はむし歯、歯槽膿漏によるものがほとんどです。

その他で歯を失う原因は歯にかかる力、無理にかかる力によって抜けてしまうことがあります。

たとえば、部分入れ歯の金具のばねは密着はしていますが接着はしていません。

入れ歯が動くと、歯も動かしてしまいます。

とくに歯は横揺れに非常に弱いため、部分入れ歯の金具(バネ)によって、本人がわからないぐらいゆっくりと歯を抜いてしまう作用が加わります。

それと、部分入れ歯を左右でつなぐバーの設計によっても、歯をてこの力で抜いてしまうような作用が加わります。

とりはずしの部分入れ歯になったときに、歯を守るような入れ歯をはめているかによって、80歳で20本の歯を保てるかどうかが決まってしまうといってもいいでしょう。

ただ、抜けてしまった歯を埋めることではなく、全体を見て残っている歯をいかに長持ちをさせるかということを設計し、将来を想定できるような入れ歯でなくてはいけません。

部分入れ歯の治療に際し、必要な知識と技術は、虫歯により歯を一本かぶせ物をする要素から、総入れ歯の要素まで必要です。

部分入れ歯になった方の多くはかみ合わせの崩壊をともなうことから、治療に際してはかみ合わせの知識とそれを治すことができる技術をはじめとして、歯周組織の管理、歯の神経の治療の理論と技術ももちあわせていることが必然になります。

部分入れ歯の設計

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大切なことは、全身から診断すること、三次元的に基準面を捉えることです。

かみ合わせの平面は、歯のある方も入れ歯の方も同じです。

体の正中に対してかみ合わせの平面が垂直で左右対称であるように設計します。

これが非常に大切です。

目の位置、耳の位置、左右の腰椎やひざの位置など、それぞれ左右対称です。

歯はどうか? 頬や唇でかくれていますが、やはりかみ合わせの平面は左右対称でなくてはいけません。

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歯がすべてある方にたいしても、部分入れ歯、総入れ歯の方に対してもこの三次元的な記録(フェイスボートランスファー)は必須です。

力の関係でもうひとつ大切なのは、入れ歯による粘膜の沈み込みと、歯の沈み込みの被圧縮度が異なるため、それも配慮しなくてはいけません。

大切なのは、入れ歯を入れたために歯をうしなってはならないのです。

入れ歯の治療計画、12のチェック事項

① 歯が抜けてない部分はどこか。(欠損の組み合わせは2億6千8百以上あります)

② 歯のすりへりがあるかどうか。(歯のすりへりが多い場合は、そこに過度の負荷がかかっているため、

  そこをチェックします。

③ 歯がグラグラしていないか。

④ 残っている歯を連結固定するべきか。(一本一本離れているよりも、連結固定したほうが強くなります。)

⑤ 顎のリラックスしている状態でかめているかどうか。筋肉のリラックスしている位置でかめるかどうか。

⑥ かみ合わせの平面がくずれていないか。

⑦ 口を開けるときまっすぐ開けることができるかどうか。

⑧ かみ合わせた時、上下の歯がかめない、あたらないところがないかどうか。

⑨ 神経筋系の機能に障害があるか。

⑩ 口の中は衛生的になっているかどうか。

⑪ 残っている歯のむし歯の予防対策がしてあるかどうか。

⑫ 審美的な状態は改善できるか。

というところを初診時にチェックします。

コラム
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稲葉歯科医院 院長 稲葉由里子 顧問 稲葉繁

稲葉歯科医院
院長 稲葉由里子

昭和44年に父、稲葉繁(現・顧問)が文京区伝通院で稲葉歯科医院を開業、平成11年に場所を移して秋葉原で新しく開業しました。

「入れ歯が合わず、食べたいものが食べられない」
「口を開けると金属のバネが見えるのがいやだ」
「うまく発音できないので、しゃべるのがおっくう・・・」

このような入れ歯のお悩みをお持ちの方、多いのではないでしょうか。

当院では、入れ歯の本場ドイツで直接学んだ技術を活かし、つけていることを忘れるくらい、自分の歯のように何でも噛めて、笑顔に自信がもてる入れ歯を作っております。

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